アニメ様365日[小黒祐一郎]

第302回 同世代クリエイターへの仲間意識と不満

 1980年代前半の『超時空要塞マクロス』『うる星やつら』の頃から、アニメファン世代の若手クリエイターの活躍が目立つようになり、1980年代中盤から、彼らが中心になった作品が増え始めた。子どもの頃からアニメを観て育ち、思春期に『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』に出会った世代の人達だ。
 僕は、彼らに漠然とした仲間意識を持っていた。例えば『マクロス』や『うる星』で、自分と年齢が近い若手スタッフが活躍しているのを、なかば自分の事のように誇らしく思っていた。『マクロス』におけるメカの描写のコテコテ感、『うる星』の過剰な遊び心は、上の世代にはないものだった。僕らの世代ならではのマニアックさだった。それに対して「僕達の世代は凄いじゃないか!」と思ったわけだ。
 その誇らしい気持ちに、1980年代後半から不満や不安が混じりはじめた。主にOVAでそれを感じた。自分達の世代のアニメスタッフは、ちょっと歪なものを作る傾向があると気がついたのだ。自分に近い世代のクリエイター達は、パロディ的なものや、趣味性の強いものは作れても、自分達が子供の頃から観てきた名作群に匹敵するようなものは作れないのではないか、と思うようになった。ただ、当時はそういった事について、何が問題であるのか分からず、漠然と不満や不安を感じていた(普遍性がなかったり、伝えるものがなかったりするのが問題なのだが、それが分からなかった)。
 パロディ的なものや、趣味性の強いものが嫌いだったわけではない。むしろ、好きだった。そういったものを楽しみつつ、同時に不安や不満を感じていたわけだ。たとえば1本のOVAを観て、その趣味性を楽しみつつ、それを作ったクリエイターや、楽しんでいる自分自身に呆れるような事があった。逆に若いスタッフが、立派だと感じられる作品を手がけると、それを喜んだりした。
 僕のそういった葛藤は、特にGAINAX作品に対して強かった。『王立宇宙軍』では「同世代のスタッフにこんなに凄い作品が作れるなんて!」と喜びつつ、ドラマの斜に構えた部分に対して「こうなってしまうのか……」とも思った(実際には「斜に構えていた」という表現は正しくないのかもしれないけれど、当時はそういった印象だった)。作り手の斜に構えたい気持ちもなんとなく分かっただけに、複雑だった。『トップをねらえ!』は趣味性を極めた作品だが、大きなテーマを扱っており、ドラマと絡めてそれをやりきっていた。その意味でも拍手喝采だった。
 そういった文脈でいくと、僕が、1990年代に東映動画(現・東映アニメーション)が作った『美少女戦士セーラームーン』を全肯定できたのは、同世代的な趣味性の強さと、東映動画作品らしいメジャー感が共存していたからでもある。さらに話は跳ぶが、1990年代後半の『新世紀エヴァンゲリオン』『機動戦艦ナデシコ Martian Successor Nadesico』は、同世代スタッフによる自己言及が込められた作品だった。趣味的な作品を好む事そのものも、作品に反映されていた。ああ、なるほど、自分達の世代はこういうところに行きつくのかと思ったりもした。
 とにかく、そんな葛藤を心の片隅に置いて、僕はアニメを見続けた。

第303回へつづく

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(10.02.08)