アニメ様365日[小黒祐一郎]

第296回 『ゲゲゲの鬼太郎』(劇場版第1作)

 今回の原稿は簡潔にまとめる。それから、下品な話なので、ご注意を。『ゲゲゲの鬼太郎』第3シリーズ放映中に4作の劇場版が制作されており、いずれも「東映まんがまつり」の1本として公開された。僕が好きなのは第2作『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大戦争』なのだが、それについて書く前に、1985年12月21日に公開された劇場版第1作に触れておこう。
 それまでTV第1シリーズ、第2シリーズを再編集した劇場版はあったが、『鬼太郎』新作の劇場版はこれが初めてだった。といっても、この作品は24分の小品だ。今回の敵は南方妖怪とぬらりひょん。アクション中心の内容で、ストーリーとしては薄味だった。しかし、この映画には一生忘れられない珍場面があったのだ。南方妖怪のボスは、チンポという名前だった。例によって敵にまわったねずみ男からその名前を聞かされた鬼太郎が、微妙な表情を見せて「チンポ?」とオウム返しをするのが、伏線だった。
 鬼太郎達の活躍によって、南方妖怪軍団の本拠地である船も沈んだ。ぬらりひょんとチンポはボートで逃げ出すが、仲間割れをしたためにボートも沈んでしまう。そこで、チンポがやった事が凄い。「オレ様は、そう簡単にはくたばらねえぜ。それっ、人呼んで三連チンポ噴射だあ!」と叫んで、股間に生えた3本の陰茎から猛烈な勢いで小便を噴射し、水上を飛行して逃げ去っていったのだ。その姿はまるでホバークラフトのようだった。チンポは布を巻いて下半身を隠していた。この場面で初めて、彼が3本のチンポの持ち主であり、そのチンポに大変な能力がある事が判明したのだ。しかも、飛び去るときに、勢いよく小便を放つ三連チンポが、劇場スクリーンに大写しになった。
 チンポが逃げ出す場面は、たった1カットなのだが、大変なインパクトだった。それまでのストーリーを全て忘れてしまうくらいの衝撃だった。作り手は、この1カットに賭けていたのかもしれない。映画館に来ていた子ども達にも、三連チンポは受けまくっていたと記憶している。「まんがまつり」を見に行った数日後、友達と「映画の『鬼太郎』観た?」「観たよ。チンポ、凄かったねえ」「チンポ、凄かったよ」と話をした。今でも『鬼太郎』の劇場版第1作のタイトルを目にして、思い出すのはチンポの事だけだ。

第297回へつづく

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(10.01.29)