アニメ様365日[小黒祐一郎]

第202回 『夢戦士ウイングマン』

 今日取り上げるのは『夢戦士ウイングマン』だ。この作品に関しては、原作も連載で全話読んでいたし、アニメも全話をβIIで録画して、全話を放映した日に観ているはずだ。ではあるが、その後、原作もアニメもまるで反芻していない。ビデオテープも、倉庫に積まれた未整理段ボール箱のどれかに入っていて、とても見つけられない。だから、今回は完全に記憶モードで書く。思い込みによる大袈裟な表記や、勘違いがあるかもしれないが、ご勘弁を。『夢戦士ウイングマン』が放映されたのは1984年2月7日から1985年2月26日。アニメーション制作は東映動画(現・東映アニメーション)だ。
 原作の話から始めよう。1980年代には、僕達と同じようにアニメや特撮ヒーロー番組を観て育ったマンガ家達が週刊マンガ誌で活躍するようになった。彼らはアニメや特撮のパロディをやる事も多く、また、彼らの作品は、アイデアや絵柄も、僕の嗜好にびったり合った。彼らの作品を読んで、僕達は「この作者は分かっているなあ」と思っていたものだ。そういったアニメ・特撮世代の作家の代表選手が「炎の転校生」の島本和彦であり、「ウイングマン」の桂正和だった。『夢戦士ウイングマン』の原作となった「ウイングマン」は、東映特撮ヒーローの影響下にある作品だった。厳密にはパロディではなかったかもしれないが、特撮パロディ的なニュアンスのある作品だった印象だ(読んでから四半世紀近く経っている。今読んだら違う印象になるのかもしれない)。
 第175回「『宇宙刑事シャリバン』と『ペットントン』」でも触れたように、この頃、東映特撮ヒーローに活気があり、また、アニメファンの間でも特撮作品が盛り上がっているところがあった。僕達にとって、マンガ「ウイングマン」は、そういった状況とリンクした作品だった。少なくとも僕は「宇宙刑事」シリーズの関連作品として「ウイングマン」を読んでいた。
 だから「ウイングマン」のアニメ化には期待していたし、同時に、タイトルについている「夢戦士」という冠に不安を感じていた。放映が始まった『夢戦士ウイングマン』は、期待していたものとはまるで違っていた。原作にもラブコメ要素はあるのだが、アニメはずっとラブコメ寄りになっていた。ヒーローとしての格好よさは、あまり押していなかったはずだ。初期の話数はサブタイトルが凄い。1話が「空からどっきりビキニの娘」で、その後は「ヒップにシッカとつかまって」「ごっくんアオイと秘密の冒険」「ステキな美紅のレオタード」「バスルームで消えたアオイ」と続く。ラブコメというよりは、お色気アニメだ。キー局はテレビ朝日であり、局側のプロデューサーは『The・かぼちゃワイン』と同じ加藤守啓。視聴率的に成功した『かぼちゃワイン』と同じラインで作ったという事だろう。
 当然、僕はアニメ版の内容には、ちょっと不満だった。コメディ部分に関しても、全体的に垢抜けない感じだった。ヒロインの1人である美紅に「そういう事するの、よくないと思うの」という口ぐせがあり、そういうキャラの立て方も苦手だった(確認した事はないが、その口ぐせは、脚本の富田祐弘のアイデアではないかと思っている)。「せっかく東映が作るのだから、脚本を上原正三で、音楽を渡辺宙明にして、ガチガチにハードにやればいいのに」と思っていた。キャラクターデザインは兼森義則で、彼が所属するスタジオバードの作画回自体は、キャラクターのフォルムが面白く、好きではあったのだけれど、その画風が「ウイングマン」に合っていたかというと疑問だった。
 主人公である広野健太の担任が、松岡先生という女性だった。松岡先生は、北倉という男の先生が好きなのだが、北倉の正体は異次元世界ポドリムスからやってきたキータクラーという敵の幹部だった。松岡先生を演じていたのは、清楚なヒロインで人気を集めていた島本須美、北倉を演じていたのは二枚目ヒーローの富山敬。北倉が学校を離れる場面だっただろうか。その場面で、松岡先生のラブコールのオーバーさと、それを受け止める北倉に妙に人間味があったのが、やたらと面白かった。多分、スタッフが思い入れして描写したのだろう。『夢戦士ウイングマン』で一番好きだったのが、その場面かもしれない。
 他には、セイギピンクこと桃子がメインの話で、作画がいいエピソードが1本あった。それから、りろというキャラクターが登場したあたりで、妙にギャグの切れがいい話があった記憶がある(ラストで、いきなり健太が主題歌を歌いだすんだったかな)。作品の方向性には文句があったが、なんだかんだで、楽しんで観ていたような気がする。少なくとも、面白いところや、いいところを探しながら観ていたのは間違いない。

第203回へつづく

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(09.09.02)