アニメ様365日[小黒祐一郎]

第188回 1984年夏の「東映まんがまつり」

 大学生になっても、僕は「東映まんがまつり」に通い続けた。アニメファン向けの話題作でも、劇場に行かなかった作品があるにも関わらず、どういうわけか「まんがまつり」は必ず映画館に足を運んでいた。大抵の映画は、ロードショー時に見逃しても、後にレンタルビデオなり、TV放映なりで、また観る機会があるだろう。だけど「まんがまつり」の作品は短編が多いので、その全てがビデオソフトになるわけではないだろうし、TV放映の機会も滅多にない。劇場に行かないと一生観られないかもしれないと思っていた。
 第138回「1983年春の『東映まんがまつり』」で書いたように、童話等を元にした新作長編(あるいは中編)をメインにした「まんがまつり」は1983年春で一段落した。「まんがまつり」は1983年夏、1984年春にはなく、1984年夏に再開。劇場版『キン肉マン』第1作をメインにしたプログラムで、他のタイトルは『Theかぼちゃワイン ニタの愛情物語』。これはTVシリーズ『Theかぼちゃワイン』から派生した新作短編。それとTV特撮シリーズ「宇宙刑事シャイダー」新作と「超電子バイオマン」新作の計4本立てだ。
 このプログラムが大層面白かった。少なくとも、休む直前の「まんがまつり」とは比較にならないくらい楽しめた。前回書いたように、劇場版『キン肉マン』第1作は見どころの多い娯楽作だった。『ニタの愛情物語』は記憶が正しければ、基本的には普通の仕上がりで、ただ、ヒロインのエルちゃんがチンピラに乱暴されそうになるという「まんがまつり」にあるまじき展開があったはず。「シャイダー」と「バイオマン」はどんな内容だったかまるで覚えていないが、4本とも楽しく観た。『キン肉マン』だけでなく、他の3本も元気のいい作品だったのだろう。
 童話等を元にした新作長編がなくなった事について、感傷的にはならなかった。それよりも、「まんがまつり」が元気になった事が嬉しかった。このプログラムは興行的にも成功したのだろう。これ以降、TVシリーズの新作劇場版のみで構成された「まんがまつり」が続く事になる(第140回 『ユニコ 魔法の島へ』でも触れたが、唯一の例外が『グリム童話 金の鳥』をメインにした1987年春の「まんがまつり」だ。ただし、『グリム童話 金の鳥』は1984年頃に制作されてオクラ入りになっていた作品で、イレギュラーなプログラムだった)。
 ここから「まんがまつり」新時代が始まった。余談だが、翌1985年夏のプログラムから『キャプテン翼』が「まんがまつり」に登場。『キャプテン翼』は『キン肉マン』と同じジャンプアニメであり、女性ファンの人気が高かった。この作品を目当てにした『キャプ翼』ファンが、劇場に殺到。「まんがまつり」に女性ファンの黄色い声援が飛び交うという珍現象が起きた。その時にはさすがに「ああ、『まんがまつり』も変わったなあ」と思った。

第189回へつづく

キン肉マン THE MOVIE

カラー/336分(本編)/ニュープリント・コンポーネントマスター/主音声:モノラル/片面2層2枚組/16:9 LB/7作品収録
価格/10290円(税込)
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(09.08.13)