アニメ様365日[小黒祐一郎]

第116回 ゲキゲキアニメ

 『ときめきトゥナイト』は、池野恋の同名マンガを原作としたTVアニメ。放映されたのは1982年10月7日から1983年9月22日だ。先に断っておくと、僕はこのシリーズはほとんど観ていない。本編はトータルで10分も観ていないはずだ。なぜかと言うと、『スペースコブラ』の裏番組であり、僕はそちらを観ていたのだ。ほとんど観ていない作品を、どうしてここで取り上げるのかというと、ちょっとした思い出があるからだ。と、ここまで書けば、同年輩のアニメファンは、何の話か見当がつくかもしれない。あのエンディングの話である。
 この作品のエンディングは強烈だった。主人公の江藤蘭世は、吸血鬼の父親と狼女の母親との間に生まれた子供だ。この原稿を書くまで、僕は単なる吸血鬼の少女だと思っていた。そのくらい、この作品の事を知らなかった。エンディングは、蘭世が全裸の上に吸血鬼のマントを羽織って、いろんなポーズをとるというものだ。背景は黒一色で、羽織っているマントも黒。蘭世の白い肌が際立っていた。そして、彼女がボーズを決めると、マントがフワっとはだけて、可愛らしい乳房が見える。胸が見えるカットは少ないし、完全に見せるわけでもないのだけど、とにかく見せ方が上手で、ドキっとした。ヌード以外も、顔の前で手を開いて見せるカットなど、艶っぽさがあった。お洒落でエロチックな、エンディングだった。担当をしたのは、タイトルアニメーションの役職でクレジットされている杉井ギサブロー。さすがは『哀しみのベラドンナ』を作った人物だ。
 『スペースコブラ』も『ときめきトゥナイト』も、10月7日に始まっている。多分、放映が始まってしばらく経ってから「『ときめきトゥナイト』のエンディングが凄い」という噂を聞いて、エンディングを観るようになったのだろう。しばらくの間、『スペースコブラ』をBパートまで観て、そこでチャンネルを変えて、『ときめきトゥナイト』のエンディングだけ観るという変則パターンで、視聴していた。今なら、録画して観返すところだが、ヌード目当てで録画するのが恥ずかしかったのか、それはしなかった。
 エンディングは、歌のタイトルも凄い。「Super Love Lotion」である。歌詞をちゃんと聴けば、「男性をひきつけるシャンプーやコロンの香り」の意味だとわかるのだが(アニメ雑誌の記事でも「媚薬の意味だ」と説明されていたと記憶している)、高校生だった僕は「なんだかエロい」と思った。今でも、とてつもなくセクシーなタイトルだと思う。作り手が、狙ってこのエンディングを作ったのは間違いなく、僕はその狙いにハマってしまったわけだ。
 『ときめきトゥナイト』と同じ月に、同じ日本テレビでギャグアニメ『忍者マン一平』と『一ツ星家のウルトラ婆さん』が始まっている。「TVアニメ25年史」には、この3本が「ゲキゲキアニメ」と称されていたとある。僕は「ゲキゲキアニメ」のネーミングは覚えていないのだが、その3本をまとめて宣伝するCMをやっていたのは覚えている。確か、パラソルをさした蘭世が、空から降りてくる画が使われていた。それは本編スタッフが描いた画ではなかったのだろうと思う(『ときめきトゥナイト』の宣伝スチルにも同様の構図があるのだが、それとは違う画だと記憶している)が、かなり、トホホな感じのビジュアルだった。そのCMで脱力してしまったのが、僕が『ときめきトゥナイト』を観る気にならなかった理由のひとつだ。
 さらに余談めくが、『忍者マン一平』と『一ツ星家のウルトラ婆さん』は、いずれも1クールで放映が終了している。『一ツ星家のウルトラ婆さん』は本放送で数回観た。摩砂雪が参加しており、作画的にいいところがあったので、後にテレビ埼玉での再放映で、エアチェックした(最近になってDVDソフトも買ってしまった)。『忍者マン一平』は、いまだに一度も観ていない。

第117回へつづく

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(09.04.28)