アニメ様365日[小黒祐一郎]

第70回 『銀河旋風ブライガー』

 先に謝ってしまう。スイマセン。よく考えたら、謝る必要なんてないんだけど、謝っておく。僕は『銀河旋風ブライガー』の本編はあまり観ていないのだ。全部で10回も観ていないはずだ。『銀河旋風ブライガー』は、国際映画社が手がけた作品。テレビ東京系で、1981年10月6日から1982年6月25日まで放映された。主人公の宇宙の仕置き屋コズモレンジャーJ9は、ブラスター・キッド、エンジェル・お町、飛ばし屋・ボウィー、かみそり・アイザックの4名のチーム。巨大ロボット+宇宙版『ルパン三世』といった趣きの作品だった。『ブライガー』の後に、「J9シリーズ」として『銀河烈風バクシンガー』『銀河疾風サスライガー』が作られるのだが、これもあまり観ていない。あまり観ていないのに、どうしてここで取り上げるかというと、オープニングが素晴らしかったからだ。
 1話を観たのが自宅だったのか、友達の家だったかは覚えていない。オープニングを担当したのは金田伊功だ。とにかくオープニングに感動した。友達と2人で「金田伊功はやっぱり凄い!」と言い合った。あまりにオープニングが素晴らしかったので、1話の本編まで格好いいような気がした。ところが2話、3話と続けて観るうちに、本編はあまりよくない事に気がついた。どちらかと言えば、本編はダサい。これはずっとよくならないのではないか、という予感がした。その後あまり観ていないのは、そのためだ。シリーズ中にエンジェル・お町のベッドシーンがあり、ちょっと話題になった。その回は観ている。これもたまたま観たのか、友達にビデオで観せてもらったのか覚えていない。
 金田伊功は、それまでも多くのオープニングの作画を手がけていた。だが、『ブライガー』のオープニングはそのどれよりも、彼の個性が色濃く出ていた。おそらくは自由にやれた仕事だったのだろう。アクションだけではない。全体のイメージも、絵柄も、個々のカットの構成も、彼ならではのものだった。映像だけでなく「夜空の星が輝く陰で、悪の笑いがこだまする……」で始まるナレーション、山本正之作詞・作曲の主題歌もよかった。主題歌と映像のシンクロもバッチリだった。
 オープニングの映像に関しては、全カットが格好いいのだが、特に痺れたのがタイトルロゴ直後。キッドやお町が、敵の攻撃を避けながらジャンプをして、決めポーズをとるカットだ。特にこのカットは自由奔放に描かれている。キッドが銃をクルクルと回す感じも、ガニマタジャンプも、お町とボウィーが登場した瞬間のポーズも、ムチを振るうアイザックのデフォルメされたシルエットも格好良かった。金田伊功は、爆発やビームのエフェクト作画を得意としており、それが彼の魅力のひとつだったが、このオープニングではキャラクターやメカまで、エフェクト的に表現しているところがあった。エフェクトをまとって現れるブライサンダーや、そのブライサンダーにエフェクト化して乗り込むキッド達。そういった感覚がまたイカしていた。ブライガーが剣を取り出すカットでは、光のエフェクトが剣のかたちになるように表現されていて、それもよかった。勿論、爆発やビームもあり、金田流エフェクトの嵐だった。オープング後半のメカ戦では、スピード感も、動きのメリハリも、ブライガーと巨大な敵ロボットとの対比もよかった。敵ロボットを倒した後の、ブライガーの浮遊感も巧い。
 『ブライガー』のオープニングには快感があった。観ていて興奮した。動きに気持ちよさがあるだけでなく、迸るエネルギーに身を委ねる感覚がよかった。それが快感だったのだ。音楽で言えばロックン・ロールだった。若者のための刺激的な音楽という意味でのロックン・ロール。山本正之の主題歌も、コブシがきいた和製ロック。そして、金田伊功のアニメーションも、ロックだった。

第71回へつづく

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(09.02.20)