【特報部】制作7年、作画4年の高密度アニメ
小池健入魂の初長編『REDLINE』が公開決定!

小池健

 今日から始まった「アニメスタイル特報部」。このコーナーでは、新作情報やイベントニュース、関係者コメントなど、様々なトピックスを毎週紹介していく予定だ。取り上げてほしいタイトルや情報など、読者の皆様からのリクエストもお待ちしている。今後ともよろしく。
 さて、第1回を飾るのは、製作期間7年を費やして先日ついに完成した小池健監督の長編デビュー作『REDLINE』。国内では10月から全国劇場で公開される事が決定し、木村拓哉・蒼井優・浅野忠信という豪華ボイスキャストも発表された。現在オフィシャルサイトで公開されている予告編を観ただけでも、アニメスタイル読者なら鼻血が出そうな内容となっており、期待は否応なく高まるばかり。アニメスタイル編集部は、渾身の力作を完成させたばかりの小池監督に、さっそくコメントをいただいてきた。


── 『REDLINE』公開決定、おめでとうございます!
小池 ありがとうございます。
── いつ頃、完成されたんですか?
小池 ホントについ最近なんですよ。EDロールの作業などが終わったのが5月末ぐらいなので、ここ2週間ぐらいの事なんです。映像に関しては、1年ぐらい前に完成してるんですけどね。
── 制作に入ったのは、いつ頃なんですか?
小池 作画INしたのは、2005年。まだ小泉政権の頃ですね(笑)。
── じゃあ、丸4年かかったわけですか。
小池 そうですね。全体でいうと7年かかってるんですけど、作画期間だけでいうと4年ぐらいかかってます。僕としては初めての長編監督作品だったんですけど、「この人達にやってほしい」という人を贅沢に集めて、描きに描きまくってもらって作った映画なので、もの凄く迫力のある映像になっていると思います。
── 初監督作品で、しかも初長編で、さらに作画監督まで兼任されているという事ですが。
小池 そうなんですよね。まあ、作監も兼任してはいますけど、さっきも言ったように自分の好きなアニメーターを集めて描いてもらっているので、そこにプラスαで足せる部分は足させてもらって、作品を統一させてもらうというかたちでの(作監の)仕事をやらせてもらいました。とはいえ、カット数がもの凄く多いので、結果的に4年間かかってしまったということですね。1カット1枚で終わるところもあるし、ラフをたくさん入れたりするところもあったので。
── そのあたりの制作過程も、ぜひまた別の機会に聞かせてください。『REDLINE』という作品は、端的に言ってどんな映画なんでしょう?
小池 まあ、レースの映画なんですけど、お話の軸として「恋愛」と「友情」というのがテーマになっていて、それを物語として展開させていくための舞台としてレースがある、という感じですね。観ていてスッキリするような内容なんじゃないかと思います。
── ビジュアルの話に戻りますが、小池さん独特の絵柄や、アニメーションとしてのテイストは満喫できる作品になっているんでしょうか?
小池 うん、満喫できると思います。それとプラスして、今回はうまい人の原画をちゃんと活かすようにして作ったので、自分が今まで作ったものよりも、さらに“濃い”感じになってると思うんですよね。アニメーターのクセみたいな部分もきっちり残ってますし。例えば、すしお君をはじめ、戸倉紀元さんとか、山田勝哉とか、スーパーアニメーターの人達にたくさんやってもらっています。僕の画の濃さと、そういう特殊技能を持っているアニメーターのクセとか嗜好とかもプラスαできっちり入ってるので、見応えたっぷりだと思います。
── 凄くアニメスタイルらしいコメントだ!
小池 そうですね(笑)。

REDLINE

── 作画以外の面でも話題を呼んでいますね。
小池 ええ。ついこの間、キャストも発表されまして。
── その話題は最後にとっておくとして、その他に「ここが売りだぜ!」というポイントはありますか?
小池 自分でもこれは凄いなと思うのは、音響ですね。今回はSEとかBGMとかを、通常のアニメーションとは違う発注の仕方でつけてもらったんですよ。
── というと?
小池 SEに関しては、とにかく全部細かくつけてくれ、と。通常のアニメーションだと、ざっくりSEをつけている場合が多いと思うんです。たくさんつけても互いに相殺して聴こえなくなってしまうから、という理由もあるとは思うんですけどね。だけど今回は、とにかく見えるもの、あるいは見えなくても、その状況にあるもの全ての音をつけてくれ、というオーダーをさせてもらいました。そこからさらに調整していくというやり方だったので、音に凄く厚みがあるというか、迫力があるし、聴き応えがあると思うんですよね。
── なるほど。
小池 BGMも同じようなかたちでやっています。『REDLINE』の場合は、すでに画が完成していたので、音楽担当のジェイムス下地さんのフィーリングに全てお任せしました。だから、ジェイムスさんには音楽監督としての立場で曲をつけてもらったというか。もちろん、調整して抜いた部分もあるんですけど、かなり贅沢に作ってもらっていますね。あと、今回はシーンにぴっちり合わせて曲を作ってもらってるんです。キャラクターの台詞の部分では音を絞ったりするところも、最初から計算して作ってもらってる。
── いわゆるハリウッド・スタイルというか、日本ではなかなかできない作り方ですよね。
小池 そういうシーンにぴったり合った音の気持ちよさは、通常のアニメーションとは違うんじゃないかと思います。ぜひ楽しみにしてほしいですね。
── 原作・脚本・音響監督をつとめている石井克人さんとのコラボレーションは、いかがでしたか?
小池 いいっすよ! 石井さんが特に貢献されたところは、音響演出と、やっぱり、あのとてつもなく魅力的なキャスティングですね。皆さんご存知の。
── あの豪華キャストは石井さんのアイディアなんですか?
小池 最初は「小池君がいちばんお願いしたい人の名前を出してくれ」と言われて、そこから、石井さんと相談してあの方達にお願いしたいという事になりました。で、オファーする際に、石井さんから作品の魅力であるとか、監督がどうしても欲しい声なんだという事を丁寧に説明していただいて、それで皆さんに快く引き受けていただいたという経緯があるんです。だから、石井さんでなければ絶対にできない事だったと思います。凄い贅沢だなあ、ありがたいなあ、と思ってます。
── 何はともあれ、アニメスタイル読者は必見の作品ということですね。
小池 ええ。ぜひ観に行っていただきたいです。凄いアニメーターにたくさん参加してもらっているので、とりあえず観ておいたほうがいいんじゃないかな、と(笑)。


『REDLINE』

2010年10月、新宿バルト9ほかにて全国公開

●スタッフ
監督・キャラクター&メカニックデザイン・作画監督/小池健
原作・脚本・音響監督/石井克人
脚本/榎戸洋司、櫻井圭記
音響監督/清水洋史
音響効果/坂本典之
音楽/ジェイムス下地
アニメーション制作/マッドハウス

●ボイスキャスト
木村拓哉/蒼井優
我修院達也/岡田義徳/津田寛治/森下能幸/AKEMI
青野武/廣田行生/石塚運昇/三宅健太/石井康嗣/チョー/堀内賢雄
浅野忠信

●関連サイト
『REDLINE』公式サイト
http://red-line.jp/

マッドハウス公式サイト
http://www.madhouse.co.jp/

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