アニメ音楽丸かじり(85)
5月、僕が自腹で買ったCDはコレだ!

和田 穣

 今回はいつもの新譜紹介ではなく、「先月自腹で買ったCDを晒していくコーナー」としてみたい。5月は注目の作品が色々とあったので、2回の連載ではその全てを紹介しきれなかったという事情もある。
 まずはこちら。いきなりアニメソングではなくて恐縮だが、思わずジャケ買いした「非公認戦隊アキバレンジャー」のオープニング主題歌だ。BS朝日およびTOKYO MXで放映中の特撮ドラマで、もちろん東映の「スーパー戦隊シリーズ」のパロディ。本家の戦隊ヒーローもゲスト出演する。
 なにしろ往年の特撮主題歌レコードを意識したジャケットが秀逸。いかにもそれっぽい3Dの番組ロゴ、懐かしい「日本コロムビア」の書体、(C)表記やCD番号を配したレイアウト、ジャケットの隅々までギチギチに詰め込んだデザインなど、実にそれらしく仕上がっている。
 歌唱は桃井はるこfeat.山形ユキオ名義で、桃井の甘ったるいロリータボイスに山形ユキオのワイルドな雄叫びが重なる。作詞・作曲は桃井自身によるもので、曲調はAメロがアイドルテクノ調、サビでロック調に変化する。桃井お得意の路線で、代表曲のひとつ「ワンダーモモーイ」を思わせるものだ。歌詞はネット依存やヒトカラなど、オタクの痛々しい日常を高らかに歌い上げており、オタクなら共感するか苦笑するしかないだろう。自身もディープなオタクである桃井はるこならではの楽曲だ。

「非公認戦隊アキバレンジャー」
主題歌「非公認戦隊アキバレンジャー」

COCC-16588/1,260円/日本コロムビア
発売中
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 OVA『機動戦士ガンダムUC』のサントラCD第3弾が5月9日にリリースされた。これまでにサントラが2枚出ており、そこでepisode1から4までの音楽はほぼ網羅されている。従ってサントラ3にはepisode5以降に使用される新曲が収録されているのだが、episode5のBD/DVD発売予定日は6月8日。サントラが1ヶ月も先にリリースされるという、異例のスケジュールとなっている。異例と言えば、全7巻のOVA作品でサントラが3枚も出るというのは珍しい。『ガンダムUC』の人気の高さ、そして澤野弘之による劇伴の評価の高さがうかがえる。
 episode5は5月19日から2週間限定で劇場公開されたが、僕は残念ながら参加できず。従って現時点ではBGMと映像とのマッチングは分からない。しかしいずれの楽曲も、これまでの『ガンダムUC』のイメージを損なわないもので、オーケストラによる壮大なスケール感と、打楽器を多用したハイテンションな作風は変わらない。BD/DVDへの期待も高まろうというものだ。ブックレットによれば編成は弦楽器が10/8/6/6/4で、トロンボーン2、チューバ1、ホルン6にドラム、ギター、キーボードが加わる。チェロとコントラバス、ホルンの人数の多さが目立つ。これが『ガンダムUC』劇伴の重厚な響きを生みだしているのだ。

 このCDは2枚組になっており、1枚目には劇伴の新曲、そして2枚目には昨年10月に渋谷公会堂で行われたイベント「機動戦士ガンダムUC episode4 最速上映会 Film&Live」でのライブ演奏が収録されている。澤野弘之が自らピアノを担当し、バンドとオーケストラを従えての貴重なテイクであり、CD化されるのは嬉しいところだ。
 ライブには劇伴の録音メンバーが多く参加しており、演奏は実にタイトでほぼ完璧な出来。まさに眼前に『ガンダムUC』の世界が広がるようで、実にイマジネーションを刺激してくれる。各楽曲はこのライブのために再構成・再編曲されており、劇中やサントラでのそれよりも演奏効果がアップしている。改めてBD/DVDを視聴し、聴き比べてみるのも一興だろう。

『機動戦士ガンダムUC』
オリジナルサウンドトラック3

SMCL-264~265/3,360円/ミュージックレイン
発売中
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 三柴理といえば筋肉少女帯、特撮など大槻ケンヂ人脈での活躍が目立つピアニスト。アニメファンにも『【俗・】さよなら絶望先生』主題歌「空想ルンバ」における華麗なピアノ演奏は印象に残っているのではないだろうか。ロック界のキーボーディストと言えば、音量を出しやすいオルガンやシンセサイザーをメインに使用するのが通例だが、三柴はあくまでピアノのみでエレキギターやドラムの大音響に挑んでいく、まさに異端のピアニストだ。
 彼はこれまでのソロ活動で、ショパンなどクラシックの名曲に挑むかと思えば、ピアノ1台でハードロックやプログレの楽曲をカバーするなど、幅広い音楽性を追求してきた。5月23日には、アニメソングのピアノ独奏によるカバー集「favorite ANIME songs cover THE PIANO SIDE」を発表。取り上げた楽曲は、『神のみぞ知るセカイ』の「God only knows 第三幕」や『緋弾のアリア』の「Scarlet Ballet」、『バカとテストと召喚獣』の「Perfect-area complete!」、『IS〈インフィニット・ストラトス〉』の「STRAIGHT JET」、『とある科学の超電磁砲』の「only my railgun」「LEVEL5 -judge light-」となぜかイマドキの萌え要素の強い作品の主題歌ばかり。ワイルドな風貌のご本人とのミスマッチぶりが可笑しいが、お得意のピアノ編曲によってゴージャスなピアノ音楽に変身させているのはさすが。特に「God only knows 第三幕」は、緩急の起伏があるアレンジで、まるでピアノソナタのようなドラマ性を生みだしている。演奏能力の高さは当然として、編曲能力の高さが伝わってくる1枚だ。
 彼ならばアイドルポップだろうが電波ソングだろうが声優ラップだろうが、どんなアニメ主題歌でもピアノ曲にアレンジしてしまいそうなので、もし次回があればそういったややキワモノ系の楽曲にも挑んでほしいと思ってしまう(彼以外には誰もできないだろうから)。ピアノという楽器の、無限の可能性を感じさせてくれるアーティストだ。

「favorite ANIME songs cover THE PIANO SIDE」三柴理

TSCM-1/2,000円/タブリエ・コミュニケーションズ
発売中
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(価格はすべて税込)

(12.06.05)