アニメ音楽丸かじり（42）
『劇場ガンダム００』サントラ、飛蘭１ｓｔアルバムが発売！
和田 穣
５月の連載で、僕が茨城県まで田植えに行った事をお伝えしたが、いよいよその稲の収穫となった。今夏の猛暑によって稲はやや早めに実っており、周辺の田んぼはもう稲刈りを終えた状態。収穫作業は至ってシンプルで、大ぶりの鋸鎌で稲をザクザクと刈り、束ねてから稲木に掛けるというもの。あとはお天道様に任せて、１週間の天日乾燥を行えば完成だ。コンバインを一切使わない、昔ながらの手作業による収穫である。仕事を終えた後の昼食は、新米をシンプルに握っただけの塩むすび。これがまた滅法うまいのだ。きっと日本人は、百年前も千年前も同じように、こうして収穫の喜びを味わったのだろうなあ、と思いを馳せた。
９月18日より順次全国公開中の劇場作品『機動戦士ガンダム００ -A wakening of the Trailblazer-』のサントラ盤が９月22日にリリースされる。ＣＤ２枚組に、主題歌「閉ざされた世界」を含む全30曲を収録している。
音楽を担当するのは、ＴＶシリーズに引き続いて川井憲次。これまで様々な楽器を劇伴に取り入れてきた作曲家だが、本作の音楽は直球勝負。オーケストラとブラスを中心に据えたオーソドックスなサウンドで、他は曲によってドラムやギターが入る程度だ。
最大の特徴は、延べ40人による混声合唱を多用していること。宇宙的な空間の広さを表現しており、「敵が宇宙人である」という本作のテーマ性にはピッタリ。『ガンダム』シリーズの１本であると同時に、ＳＦ映画でもあるという作り手の主張が伝わってくる。
劇場『ガンダム００』の映像としての特徴は、質・量ともに充実したバトルシーンにあると思うが、これらの場面を飾るド派手な音楽もたっぷり収録している。スローに始まり、途中から一気にヒートアップする16曲目「ENVOY FROM JUPITER」や、13分10秒に及ぶ「THE BATTLE OF STRANGERS」は、映像の展開に寄り添って、目まぐるしい展開を見せる大曲。これらの楽曲では、ドラムやティンパニで川井憲次らしいパンチの効いた重低音が楽しめ、いかにも劇場で映える音作りとなっている。
全般的にハードな作りの本盤だが、ディスク２の２曲目「FATEFUL WAR」や、７曲目「MEMORY OF PLANET〜SYMPATHY」の後半は情感あふれる泣きのメロディで、ファンにはお馴染みの「川井節」もちゃんと楽しめるので安心してほしい。
劇場『機動戦士ガンダム００ -A wakening of the Trailblazer-』 オリジナルサウンドトラック（音楽：川井憲次）
VTCL-60221〜2／3,360円／フライングドッグ
発売中
［Amazon］
飛蘭のファーストアルバム「Polaris」が９月８日に発売された。『喰霊—零—』挿入歌「Dark Side of the Light」、『CANAAN』ＯＰ主題歌「mind as Judgement」、『聖痕のクェイサー』ＯＰ主題歌「Errand」、劇場『ブレイクブレイド』ＥＤ主題歌「SERIOUS-AGE」を含む全16曲を収録している。そのうち14曲でElements Gardenが作編曲を担当しており、攻撃的なストリングアレンジとパワフルな歌唱とのマッチングを楽しめる１枚だ。
そのほか「Distant point」が『喰霊—零—』のイメージソング集「百合ームコロッケ」から、「Day of the fate」「飛翔の刻」が「CANAAN Inspired album」から収録されており、飛蘭がこれまでに関わったアニメ作品からのベスト盤とも言えるような構成になっている。
限定盤には、今年６月28日にShibuya O-Westで行われたファーストライブのＤＶＤが付属している。全25曲とＭＣを含めて合計２時間半近いボリュームがあり、フルセットに近い充実した内容だ。購入を検討している方には、買えるうちに限定版を入手しておく事をお薦めしておく。
デビュー後わずか１ヶ月で「Animelo Summer Live 2009 -RE:BRIDGE-」のステージに立ち、その後も「ランティス祭り」「Animelo Summer Live 2010 -evolution-」と、大舞台でも全く揺るがない歌唱力を見せつけた飛蘭。それだけにこのライブも安定感が素晴らしく、実力派揃いのバックバンドの演奏も相まって、グイグイと楽曲に引き込まれるパワーがある。セットリストの終盤「Errand」「mind as Judgement」が続くあたりでは、観客の熱狂も凄まじい。ＣＤのオマケと言うには贅沢な、１本の充実したライブ作品といえる。
（価格はすべて税込）
（10.09.21）